光の海

「光の海」 津村節子 著

2009年6月22日に紹介しています。

感想書いていますので読んでみてください。

内容はすっかり忘れていていましたが読みながら思い出しました。

10篇ある短編のうち「光の海」を取り上げて、「自分は雪江のようにはならないだろう」と述べていましたがが10年経ってもまだその考えに変わりはなということが可笑しいです。

「光の海」の他の九編もとっても面白い。

古本をバザーで売るつもりで「どれでも50円」と書いた箱に入れていたのですが内容を忘れていて再読しました。

名作です。特に私と同じ年代の方たちにお勧め!

10年の間に、メールやスマホが一般に普及し、家族のあり方は随分変わってしまって、若い読者にとっては、まどろっこしいところもあるかもしれません。

でも私は、通信手段がまだ少なかったこの小説の時代を生きてきたので10の短編一つ一つをリアルに体感できとても楽しく読みました。

 

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未来

「未来」湊かなえ著

10歳の女の子、佐伯章子のもとに、一通の手紙が届く。それは20年後の章子からの手紙。

手紙には「二十年後の章子です。あなたは今お父さんを失った悲しみ、発達障害を患っているようなお母さん、教室ではいじめを受けて、、なにかと辛い思いがあると思いますが、20年後のあなたは、胸をはって幸せだと言える人生を歩んでいます。悲しみの先には光差す未来が待っています。頑張れ章子!」とあり、文章にして気持ちを綴ることを勧めていました。

そこで章子は20年後の自分にお手紙を書き続けていきます。

その手紙の中から、章子の日常。お父さんとお母さんの秘密、いじめっ子の亜里沙、べたべたついてくる美里、教師、母親を取り巻く大人の関係、男友達、、、、。それぞれが深い事情をもつ家庭の事情が描かれています。

章子や章子を取り巻く環境はどれもが衝撃的なエピソードで埋まり「そんな~!ありえな~い」といった感じの辛く苦しい事実の連鎖ですが、だんだん「ありえるありえる」とも思わされ、20年後の章子が書いてくれた、「あなたの未来は光が差しています」の文章に読者の私までが心の片隅に安堵の気持ちを持ちながら読み進められました。

第1章は章子の手紙

第2章は教師のエピソード 第3章は男子生徒のエピソード 第4章は未来に希望をもちながら進む章子のエピローグ。

「ああ、ありえるありえる」と思わせるに至った湊かなえの筆力には感動を覚えました。

文中で教師が口にしたセリフは湊ワールドに欠かせないメッセージだなと思いました。

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人の数だけ暮らしがあり、人生がある。他人の人生に自分のものさしを当てて口に出すことは、とても恥ずかしい行為なのだ。

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とても読みごたえのある小説でした。

直木賞候補作らしい。お薦めです。

 

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ザビエルの夢を紡ぐ

「ザビエルの夢を紡ぐ」 郭南燕 著

前回紹介した「守教」をあわせて紹介したい本です。

<黒斜め太字は本書より抜粋>

1865年3月17日、潜伏キリシタンがはじめて現れ、世界の「奇跡」と思われたという。

しかし、この「奇跡」はザビエルによって300年前に予言されていた。ザビエルは言っていた。「日本人だけがきわめて困難な状況のもとでも、信仰を長く持続してゆくことが出来る国民だ」と。

1873年に禁教高札が撤廃されてから、宣教師が相次いで日本に入国し、宣教、教育、福祉、医療に従事しながら、短期間に習得した日本語による著述活動をも盛んに行った。21世紀の今日まで、数万人の来日宣教師のうち、約300人が非母語である日本語を用いて、およそ3000点の著書を執筆し、刊行してきた。

この本では、ザビエルの予言へ呼応する近代宣教師たちの苦労を苦と思わない行動を著作を紹介しながら書かれている。

現代日本の知識人すべてが宣教師に深く影響されたといっても過言ではないと知りました。

ざっと書くだけで、すみません。時代が前後しますが、鶴見俊輔、田中耕太朗、司馬遼太郎、森鴎外、伊藤博文、大佛次郎、遠藤周作、三浦朱門、須賀敦子、井上やすし、渋沢栄一、中原中也、石牟礼道子、、その他いっぱいの著名人。

そして、私達世代のカトリック信徒誰もがが知っている著名な神父として4名、ビリオン神父、カンドウ神父、ホイヴェルス神父、ネラン神父について、詳しく書かれている。

本書は、日本人とともに日本文化を作り上げ、日本に自らの時間、知識、能力、情熱、生命を捧げたザビエルそして4人の宣教師の功績を整理することによって、日本文化に存在する「国際色」を確認し、「日本語文学」という宝庫を発掘することを目的とする。(序章より)

カトリックのミッションスクールを母校として育った私にとって、とても感慨深いものだった。

朝日新聞の書評で知り4000円で高いなと躊躇したけれど買ってよかった。これだけの資料を集め纏められた郭さん。すごいな。4000円は安すぎるぐらい。

皆様ぜひ読んでください。

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守教

「守教」箒木蓬生 著 (上下)

これまでに、何回かキリシタンに関する書籍を紹介しました。

「守教」もキリシタンにまつわる小説です。

1600年徳川幕府による徹底的な撲滅政策でキリシタンは壊滅されたと思われてきました。

ところが1907年一人の女性が教会に現われたことでキリシタンは撲滅されたのではなく密かにキリシタンの教えを守り続けていた人々がいたことが分かった。

迫害から逃れつつ教えを守り続ける人々の真摯で清らかで息の詰まる緊張感のあふれるしかも清々しい物語です。

1カトリック教徒としてこの方たちのおかげで今の私があることに気づかせてくれた心にしみる小説でした。

小説といっても正確な時代検証にそっていて、地域が福岡県で長年福岡に住んだことがあるので場所や方言に馴染むことが出来てとても良かったです。

何人かの方からも感動の感想を聞いています。

キリシタンに関心ある方には是非お薦めしたいです。

 

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バッタを倒しにアフリカへ

【バッタを倒しにアフリカへ】 前野ウルド浩太郎 著

アフリカの砂漠地帯では何万匹ものアフリカトビバッタの大群がある日突然現われ、大地に押し寄せ耕作物を食い尽くし深刻な飢饉を引き起こしているということを昆虫研究者の前野浩太朗が知り、人類を救うため、そして、自身の夢を叶うために、単身サハラ砂漠・モーリタニアに乗り込み、謎多きバッタ相手に繰り広げた死闘の日々を綴った1冊である。

コータロウ少年は小学生の時ファーブル昆虫記に魂を奪われるほどの感銘を受け、将来は絶対昆虫博士になるぞと決意し昆虫研究の道に進む。

ここは有名な魚博士の「さかなクン」に似ている。さかなくんは進学に苦労したようだけれど、コータロウくんは神戸大学に進学し、コツコツ昆虫の研究を続けてこられた。

しかし今国内有名大学で問題なっているポスドク人間の一人である。ポスドク人間というのは、研究の夢を持ち大学に入学し大学院に進学、ドクターコースにまでいって博士号を受理しても、就職が出来ない若きドクターのことを言う。

あのあこがれのファーブルでさえ教師をしてお金を稼いだという。

給料が約束された研究所の門戸は狭く、ポスドクさんたちは世界の大学の短期の研究員や奨学金を求め歩いて苦労なさっている。コータロウ君はそのうちの一人であった。

世界にアフリカトビバッタを研究する研究員やバッタ撲滅センターなどはあるけれど、実地に行って自分の目でデータを集めて研究する人が少ないことを彼は知り、また自分も子供の頃から直接昆虫に触り愛し知識を得てきたことを大切にしているので、無収入のまま貯金を崩して実地調査に向かう。

昔、信州地方にイナゴの大群が押し寄せ農作物を食い荒らしたという話を聞いたことがあるけれど、今長野でイナゴの珍味の佃煮として見ることが出来る。過去にどんな方法でイナゴを壊滅させたのかはしらないのだけれど、アフリカでは今アフリカトビバッタで困っているそうです。

国としては単発的に強力殺虫剤で一網打尽しているようだけれど、それでは自然破壊・地球破壊に繋がるではないか。誰もアフリカで腰を据えて研究しておらず、バッタの研究が止まったままと知ったコータロウ君は「未熟な博士でも全力かませれば新しい発見が出来るかもしれない。アフリカの食糧問題も解決できる。その上成果をひっさげて凱旋すれば、日本の研究機関に就職が決まる可能性も極めて高い!見えた!バッタに喰ってもらえて、昆虫学者としても食っていける道が開けるのではないか!」と

夢を叶えるために手っ取り早そうなので、アフリカに単身乗り込んだのが33歳独身浩太朗君2011年春のことでした。

本の帯に「前代未聞、抱腹絶倒の科学冒険ノンフィクョシン!」とあります。

コータロウ君は5年間にわたる苦渋のモーリタニアでの研究活動が認められ現在はポスドクを卒業し、昆虫研究で生活費をまかなえるようになりました。

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君たちはどう生きるか

「君たちはどう生きるか」 吉野源三郎著

時事問題解説で有名な池上彰さんや新聞誌上で絶賛されているので読んでみました。

子供向けの哲学書です。

小学生高学年から高校1年生ぐらいのすべての子どもとその親に読んでほしいなあと思いました。

池上彰さんが「君たちはどう生きるか」を読む前に読んで欲しいと書かれた小文「私達はどう生きるか」を載せます。

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私がこの本に出会ったのは、小学生の時。父親が買ってきました。親から「読め」と言われれれば反発するのが子どもというもの。当初は読もうとしなかったですが、書き出しから「コペル君」が登場し、思わず引き込まれ、気がつくと夢中になって読み進んでいました。

今になってみると、父が子どもに読ませたくなった気持ちがわかります。人間としてどう生きればいいのか、楽しく読んでいるうちに自然に考える仕掛けが満載だからです。

これは子どもに向けた哲学書であり、道徳の書なのです。

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4月に誕生日を迎える高校生の孫息子に誕生プレゼントとして贈りました。

読んでくれるかなあ、、。

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何者

「何者」 浅井リョウ 著

この春から大学生になる孫娘が「読書の楽しみに目覚めた!」と嬉しいことを言ってくれました。

それで見せてくれた直木賞受賞作品の「何者」です。映画化もされたらしい。

就活に励む大学生6人の仲間の話です。

下宿は男女で又は男同士でシェアしたりして訪ねたり訪ねられたり、ビールやスナック菓子など飲み食いしタバコも普通に吸い就活状況を話しながら仲良く付き合っている。

それぞれがSNSやラインやツイッターやフェイスブックで情報を頻繁に流しそれを媒介に会話が弾む。

別に不健全な感じは漂わず最近のありふれた大学生ってこうなのかと思い起こさせられる。

私からみるとスマホ中心の付き合い方はうわべだけで軽薄でこんなので良いの?と心配になる。

最後の50ページぐらいでやっとハンドルネーム「何者」が何者であるのか分かるようになり、著者からのメッセージが少し分かりました。

でないと何故この本が直木賞?と思わされる。

メッセージはうわべだけの軽薄な付き合いと思われている若者の心の奥に潜む真相です。

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「何者」を紹介してくれた孫娘の感想を載せます。

今のSNSの影響が強い世の中でも、そんな世の中だからこそ、自分には何が出来るか何をしたいのかを真剣に向かうべきだってことを感じさせられた。

AO(神大国際人間科学部)の受験だったから、就活のときにはAO受験勉強は役にたつなとも感じて嬉しくなりました。

 

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ホテル・アイリス

「ホテル・アイリス」小川洋子著

ホテル・アイリスを読むのを楽しみにしていると公表してしまったから感想文を書かねばなりません。

私には受け入れられない小説でした。

エログロ暴力小説はダメで受け入れられないのですが、ホテル・アイリスもなんというかDV小説です。

と言ったら著者にちゃんと読んで下さいと怒られるかもしれないけれど気持ち悪くてちゃんと読めなかった。

これは「あなたに読ませたくない1冊」です。

ホテル・アイリスという海辺のリゾートに祖父が作ったホテルを母親が経営して、厳しくしつけられながらホテルを手伝っている17歳の少女の私が主人公です。

お客として来た初老の老人の声に惹かれて、誘われるまま彼の住む小島に連絡船にのって付いていきます。

そして破廉恥なDVを受けるのですが、怖いと思いながら恍惚感を持って彼から離れられなくなるのです。

確かに小川洋子独特のペンの運び方で最後まで読みはしました。

女流小説家の川上弘美さんが小川洋子の小説で一番好きな長編と書いてられました。川上弘美さんも小川洋子さんも芥川賞選考委員をされています。

小説家って凄いなあとつくづく思いました。自分が体験していないことでも想像の力で言葉にして描写出来るんですね。

小川洋子さんが読者に伝えたかったメッセージは何なのか?想像出来ないわけではないけれど他の形で伝えてほしかった。

この本は、友達には読ませたくない本でした。読まないでね。

しばらく小川洋子さんの本から離れます。

 

 

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薬指の標本

【薬指の標本】 小川洋子 著

やはり予想していたように、チョット気味の悪い怖い小説でした。

主人公の私はサイダー工場に勤めていたのですが、機械に手が挟まり薬指の先を失ってしまいます。それでその会社を止め、事務員を求むという張り紙に応じて就職したのが、標本博物館でした。

思い出の品とか遺しておきたい品物を標本にして保存しておく博物館の事務員です。

そこで働いているのは経営者であり標本技術士の弟子丸氏と私の二人。

建物は取り壊しを待っているアパートのような古いものでしたが、丁寧さを隠し持った外観だった。

最初に会った依頼人は家が火事で全焼し両親と弟が亡くなり一人生き残ったという少女が焼け跡にキノコを見つけたのを保存してほしいという依頼でした。

ここには昆虫や植物といったありふれた標本は少なく、髪飾りやカスタネットや毛糸のたまやカフスボタンなど、数え切れないほどの無機物を持ち込まれていました。

そして弟子丸氏と私の地下室兼仕事場での奇妙な関係。

小川洋子独特の一見つまらないガラクタ小道具が深い意味となって存在する世界。気味の悪い情景でも何か清々しいものを感じさせる文章に惹きつけられる。

ずっと前に紹介した「沈黙博物館」のほうが考えさせられよかったです。こちらはお婆さんが亡くなった人の遺品をたしか盗み出し展示する博物館でした。

「薬指の標本」は間違って注文したわりには面白く読みました。

 

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偶然の祝福

【偶然の祝福】 小川洋子著

久しぶりの小川洋子ワールドに酔った。

7つの短篇からなっているが互いにリンクしている。

主人公は女流作家の私と6ヶ月の息子と愛犬アポロ。

小説を書かなくちゃいけないのに、筆が進まず妄想と架空の世界へいってしまいます。

そのありふれた日常と妄想の世界の絶妙な絡みが小川ワールド!

中でも私が気に入ったのは第二篇の「盗作」。

 

私が初めて文芸誌に採用され、デビュー作となった小説は実は盗作だった。題名は「バックストローク」。

ある精神病棟で不思議な美しい女性に出会い話をするようになった。その彼女から精神病棟に見舞う弟の話を聞いた。

こみ上げるようにその話をスラスラと小説に出来たのである。

その小説がきっかけで小説家の道を歩むことができたので複雑な気持ちだった。

気になってそのご精神病棟に訪れても女性は見つからない。談話室のテーブルをフッと見るとそこに、薄っぺらな英語版のペーパーバックが1冊置かれていた。古い本らしく表紙は擦り切れ変色していた。

ソファーにかけ1ページ目から読み始めると、そこには、私が書いたのと、彼女が語ったのと同じ物語がそこにあった。題名は「Backstroke

 

小川洋子さんは私のすごく好きな小説家の一人です。

この本の解説を書いた川上弘美さんも小川洋子さんのファンで、彼女の本は全部読んでいるとのこと。一番のお気に入りは短編集なら本書、長編なら「ホテル・アイリス」と書いてあったのですぐにアマゾンに注文しました。

ところが私の不注意で「薬指の標本」というのが届いてしまった。小川洋子ワールドは好きと言っても気味の悪い怖いものもある。「薬指の標本」って怖そう!

「ホテル・アイリス」は慌てて再注文しました。いずれも中古でお安いです。

いずれ本棚で紹介します。

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